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福島地方裁判所白河支部 昭和31年(ワ)75号 判決

原告

東北木材工業株式会社

被告

荒井敏夫

主文

被告は原告に対し金一八〇、〇〇〇円也及び之に対する昭和三一年一〇月四日から支払済に至る迄年五分の割合による金員を支払わねばならない。

訴訟費用は被告の負担とする。

本判決は原告が金六〇、〇〇〇円の担保を供するときは仮に執行することができる。

事実

(省略)

理由

成立に争のない甲第一号証、証人須釜泰弘、同深谷清一郎の各証言及び原告会社代表取締役大野大七郎の訊問の結果によつて真正に成立したものと認められる甲第二号証、同第三号証並に前記各証人の証言、原告会社代表取締役大野大七郎の訊問の結果によれば被告の所有であつた白河市大字鹿島字桜岡前山八番地内の松三〇本及杉七〇本を被告が昭和二八年一二月三日訴外室正一に代金一〇〇、〇〇〇円で売却し、右訴外室は同年同月一五日之を代金一二五、〇〇〇円で訴外須釜泰弘に売却、同年同月三一日右訴外須釜は更に之を原告会社に一四六、〇〇〇円で売却し、原告会社は同日その代金を右訴外須釜に支払つたことが認められる。次に原告会社は右買受けた立木の内松三〇本を昭和二九年三月下旬頃伐採したところその後被告が之を伐採現場から原告に無断で搬出使用したこと及び残りの杉七〇本をも伐採して使用したことは被告の認めるところであり之ら計一〇〇本の松杉材の価格が一八〇、〇〇〇円以上であることも被告の自ら認めるところである。よつて被告は原告に対し右立木並に伐採木材の時価に相当する一八〇、〇〇〇円の損害を不法な行為によつて与えたものであり、之に対する昭和三一年一〇月四日(訴状送達の翌日)から支払済に至る迄年五分の割合による損害金を支払う義務がある。被告は本件立木を訴外室正一に売却したことはないと主張して居り証人大戸近義の証言は右被告と訴外室正一との売買契約は被告が酒に酔つた際右訴外室の要請によつて換言すれば通謀により締結した仮装売買であると言うにあるけれども仮りに右仮装の売買が真実であつたとしても前記証人須釜泰弘、同深谷清一郎の証言及原告会社代表取締役大野大七郎の訊問の結果並に前記のとおり真正に成立したものと認められる甲第二号証によつて被告は昭和二八年一二月三一日その勤先である白河駅で右大野に右訴外室との売買を承認していることが認められるのであるから成立の争のない甲第一号証と相俟つて善意の第三者である原告会社には対抗できない筋合であるしその他前記認定を覆えすに足る証拠はない。以上のとおり原告の本訴請求は正当であるから之を認容し、訴訟費用については民事訴訟法第八九条によつて被告の負担とし、同法第一九六条により原告が六〇、〇〇〇円の担保を供するときは本判決を仮に執行することができることとし主文のとおり判決する。

(裁判官 山崎益男)

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